むかしの如来道
むかしの如来道
平成元年11月号
昔の人が荷物を背負って歩いた道、今ではほとんどが消え、また残っていてもケモノ道のようになって見えなくなっている。
腰山から老川に通じる道(如来道)も草が生い茂り、これが昔の道かと思うほど荒れている。
最近ではこの道に添った山林の手入れに行くのに使っている程度である。牛一頭がやっと通れる程の広さで、腰山の里から300m程登った所に大きな岩の前に小さな石仏が2体少し間隔をおいて立っている。

昔は藁で作った「わらじ」が供えられていたが、いまは岩一面に苔生し石仏まで包んでしまう程である。
地元の古老では、牛の守り神とか、安産の神様だとかで昔はいつも「わらじ」が供えてあったものだがと話しているが、詳しい事はわからない。
石仏一体は、正面に蓮台に座った仏様の姿、そしてその上に梵字をまた、左右と後にも梵字が刻まれているのが微かに解るぐらいまで風化している。
もう一体は、ほとんど判読はできない。ここから杉や桧の間を歩くこと10分程で峠の雑木林の中に「大日如来」「馬頭観音」と刻んだ石仏がある。建立した時期は不明だが後方に願主の名が刻んである。
このあたりから牧草地や桧林の間を、しばらく歩くと老川極楽寺の山門が見えてくる。
稲刈りを終えた田、色づき始めた草木、美しい眺めである。村と村を結ぶ唯一の道、昔をしのんで残したいものである。
昭和64年/平成元年目次
101.金の鳥を納めた「唐櫃石(からひついし)」の謎 昭和64年1月号
102.文殊の不動さん 平成元年2月号
103.座禅石と種子曼荼羅 平成元年3月号
104.雨乞いや豊作祈念のかんこ踊りの歌本 平成元年4月号
105.原始農耕時代の遺物か?川上の道祖神 平成元年5月号
106.黒住教名賀教会所 平成元年6月号
107.伝説「おまん田」 平成元年7月号
108.蔵骨器が多数出土した安田中世墓 平成元年8月号
109.笹谷峠に建つ三つの村境地蔵 平成元年9月号
110.伊勢路の宿 平成元年10月号
111.むかしの如来道 平成元年11月号
112.信仰の拠点に立つ地蔵姿の庚申(こうしん)さん 平成元年12月号