下川原の恩人前川の祐年(ゆうねん)さん
下川原の恩人前川の祐年(ゆうねん)さん
昭和57年9月号
青山町下川原に伝わる下川原住民の、京都下河原町からの移住伝説について、誌してみます。
金鶏の井戸
金鶏の井戸の伝説は、全国にかなり広まっていますが、下川原七谷にむかし真福寺という寺があり、境内にはこんこんと湧水の井戸があり、毎年正月元旦に、住民が早朝に若水を汲むことを例としていた。
ある年、正直者の若者が、一番にこの井戸から若水を汲むと水底に不思議にも金鶏がおり、ひと声高く若者の幸を告げ、早起き励行をさとした。村人はこぞって金鶏の声を聞こうと早起きを励行し、それにつれて開拓は進み、仕事の合間に、この霊泉のまろやかな甘味に極楽の境地がしたという。

黄金の鶏埋蔵地
下川原中山に長者くぼという土地があり、長者屋敷の地という。昔、京の長者が病弱な息子の療養のためこの地に住み、日頃信仰の不動尊のおかげで快方にむかった。京に帰る日、金鶏を埋め、住民の幸せのため残しておいた。
以上2つの話は、故郷を離れて新しい開拓地で働く若者に希望を抱かすため、開拓の指導者たちが説話を真の事として、吹き込んだものであろう。下川原移住は、応仁の乱2年後の1468年(文明5年)頃と思われる。また開拓の指導者は祐年さんと思われる。
昔から祐年さんとして祭られる塚があり、下川原の祖先であり、恩人である通称祐年さんとしてあがめられた。今は岩脇さんが祭
られている。なお下川原の西山屋敷の人は、こぞって早起きである。 祀られる祐年さん
昭和57年目次
19.元旦の初歩きコース尼ケ岳登山 昭和57年1月号
20.商売繁盛と福徳の神青山恵比寿 昭和57年2月号
21.近代的な装いを見せる矢持橋界隈 昭和57年3月号
22.老川の地に創建された伊賀東照宮 昭和57年4月号
23.水車の水も引いた宮の淵井堰 昭和57年6月号
24.力強く生きることを教える羽根不動院 昭和57年7月号
25.下川原の恩人前川の祐年(ゆうねん)さん 昭和57年9月号
26.流されたご神体高尾の神明宮 昭和57年10月号
27.昔ながらの神事を続ける阿保東部大当講 昭和57年11月号
28.伊賀と伊勢を結ぶ『しおないの道』 昭和57年12月号