伊賀・伊勢の境 布引峠の今昔
伊賀・伊勢の境 布引峠の今昔
平成2年1月号
伊賀は山の国、青山町と隣の町や村に通ずる道は多くの峠があります。
その一つ白山町への道には布引峠があります。
今は峠というよりは快適な「青山白山線」が走っていますが、古代から伊勢と伊賀を結ぶ「塩の道」として知られ「伊州御用害要図」には「国境峡」と記され、「針の木原」の「切通」とも書かれています。
古老に聞けば「針の木のようなタラやイバラの生い茂った荒れ野」が広がっていたと言われます。
戦後の昭和22年から外地引揚者のための農地開拓事業のため、この峠の南側の緩い傾斜地約100haが開かれ、遠く新潟、長野等の各県から続々と入植し、80戸余りの新しい村作りが始まりました。

しかし、食糧事情の好転や他産業への転換など次第に脱落が続き、昭和50年ゴルフ場の開設計画が持ち上がり、遂に数戸を残して売却して転出し、ホテルをはじめリゾート施設に変貌しました。
かつては「針の木原」とも「石谷広」といわれた町最奥の天嶮も、今は白球を追い、レジャーを楽しむ人々で賑わいを見せています。峠には、新しい伊賀、伊勢の境を表す大きな標識が建てられ、両側にテニスコートに若い人々の歓声が聞こえます。
峠は東向きに眺望が開け日の出の美しさは格別で毎年元旦には、矢持地区の初歩きのコースに多くの人々が参加します。
平成2年目次
113.伊賀・伊勢の境 布引峠の今昔 平成2年1月号
114.伊賀の中山 平成2年2月号
115.諸木のふれあい広場 平成2年3月号
116.指形の道標が示す川上の大円寺 平成2年4月号
117.江戸の文化を今に伝える伊賀名句集 平成2年5月号
118.伊勢路の天王はん 平成2年6月号
119.諸木氏城跡 平成2年7月号
120.県指定文化財「たわらや」の看板類 平成2年8月号
121.県指定天然記念物 奥山権現のブナ林 平成2年9月号
122.名張の沃野(よくや)をうるおす新田水路 平成2年10月号
123.弘法大師の三度栗 平成2年11月号
124.初代斎王の頓宮跡か照皇宮神明社(しょうこうぐうしんめいしゃ) 平成2年12月号