全国でも数少ない蔵王権現の石像
全国でも数少ない蔵王権現の石像
平成3年8月号
青山町駅裏の阿保沢代墓地の谷一つ隔てた東の小高い丘の上に「蔵王大権現」の額がかかった、約十畳敷の拝殿が建っている。内部正面に高さ約2.3mの銅板葺き本殿(堂)があり、格子扉の中に蔵王権現の石仏(神)が安置されている。
古くから、この丘を蔵王山といい、石像は露天立ちであったが、戦後、信仰心の厚い有志の方々が相寄って、参道や境内地を整備し、先ず本殿(堂)を建て、それを覆うように拝殿を建てて、お祭りされた。
蔵王権現は、役行者(えんのぎょうじゃ)が吉野で修業中に現れたと伝えられ、修験道(しゅけんどう)の信仰の中心となった。この像を扉越しに拝すると、高さ約1m、幅約45cmの舟形石に浮彫にし、頭部に円光を負い、怒った顔で、右手を振り上げて金剛杵(こんごうしょ)を握り、右足を蹴上げて左足で立つ姿であり、最近彩色されたらしい。近寄れないので銘は読めないが、多分江戸末期の作ではないかと思われる。
日本石仏事典(雄山閣、昭和55年刊)には、蔵王権現の石像は、きわめて少なく、全国でも大分県に五基、奈良県に三基、長野県と香川県に各一基と記されていて、三重県では発見されていないらしく、大変珍しい貴重な石仏(神)であると言えよう。
町内の信者のほか、遠く兵庫・和歌山・大阪・奈良方面や、津・上野・名張などからも参拝者が多いとのことである。
平成3年目次
125.川上の地蔵堂と菩薩立像 平成3年1月号
126.八柱神社の巨岩 平成3年2月号
127.霧生中山の道 平成3年3月号
128.天正の伊賀乱をしのぶ 小鴨(こがも)氏城跡 平成3年4月号
129.珍しい高尾の石室・石仏地蔵 平成3年5月号
130.妙楽地の秋葉さん 平成3年6月号
131.町指定文化財 天照寺の石造五輪塔 平成3年7月号
132.全国でも数少ない蔵王権現の石像 平成3年8月号
133.戦後開拓の歴史を刻む老ヶ野・古田・青山道路 平成3年9月号
134.奉供養 勧進橋の碑 平成3年10月号
135.霧生の鹿島神社 平成3年11月号
136.6,7世紀の代表的な墓 羽根・峯台(みねだい)一号古墳 平成3年12月号