六郎別当(ろくろうべっとう)
六郎別当(ろくろうべっとう)
平成7年7月号
霧生橋から高尾への道の集落を過ぎるあたりから、左へ高尾林道を800mほどたどると右の山へ入る急な道がある。杉林の間を縫うように登りつめると、急に視界が開けてくる所が「六郎別当」である。
珍しい地名だが正確には霧生字狼谷と言い小字名が六郎別当。地元では「ろくべえ」と呼び親しまれている。高低差の少ない水田地帯で、所どころに野小屋があり、水も豊富である。
六郎別当と言われる地名から「平安から鎌倉時代ごろに戦に敗れた平氏の落武者が隠れ住んだのでは。また、この近くにヘイシという地名もあるところから、この時代に挿入して識者の判断を待つ。」と書いた先人の書物がある。
このヘイシへ行く途中には堂の前と言う所があって、江戸時代の終わりごろまではたくさんの人々が住み、お寺もあったらしく付近には、いまも五輪塔が叢(くさむら)にあるようだ。
ここから更に道をたどると高尾に通じ、平安時代に謀反を起こし三国(さんごく)嶽にたてこもったと伝えられている藤原千方伝説の洞窟跡へも近いことから、千方の武将が住んでいたという人もある。周囲を散策したが、それらしい住居跡や砦跡と思われる場所は発見できなかったが、その頃、地位の高い武士の領地ではなかったかと思われる。
霧生広刎(ひろはね)の集落の中ほどに「次郎別当」と言う所もあって、千年も前からのロマンが、今もこの地名にいきづいているようだ。
平成7年目次
173.街道いま、むかし 国見~高尾への道 平成7年1月号
174.青山高原 田代(たしろ)の今昔 平成7年2月号
175.福川地区の産土(うぶすな)神 八柱(やはしら)神社 平成7年3月号
176.二代目の阿保駅 近鉄・青山町駅の今昔 平成7年4月号
177.広域農道「千方(ちかた)橋」の完成 平成7年5月号
178.青山高原三角点 平成7年6月号
179.六郎別当(ろくろうべっとう) 平成7年7月号
180.近鉄・青山町駅付近 遺跡の発掘調査 平成7年8月号
181.兼好法師の恋ざんげ 平成7年9月号
182.勝地林道の今昔 平成7年10月号
183.諸木の産土(うぶすな)神 鹿島様 平成7年11月号
184.幻でなかった古塁砦の跡 平成7年12月号