原始農耕時代の遺物か?川上の道祖神
原始農耕時代の遺物か?川上の道祖神
平成元年5月号
川上のほぼ中央にある地蔵堂の庭にそびえる大銀杏のすぐ上に、3つの道祖神が並んで立っています。
いずれも自然石に刻まれたもので、中央には錫杖(しゃくじょう)をもったいかめしい祖神が立ち、左右には柔和な男女二人の像が刻まれています。

道祖神は原始時代から、村の人々の生活を守るため悪霊や疫神などを退散させることを念じて、峠や村境などに建てられたといわれています。
その後、男女和合、夫婦円満を祈って、二人の像を刻み中には男根を形どったユーモラスな石も見られます。
この三体の道祖神の前には石灯籠が建てられ、「文化元年6月吉日、願主、武兵ヱ。施主、村中。」とあり、この時代に村中の道祖神の代表としてここに祀ったと思われます。
このほか川向いの三界万霊無縁墓地の中には二十基以上の道祖神がみられ、親子像と思われる珍しい三人体が刻まれたものもあります。
さらに北野には「ヘノコ地蔵」といわれる男根そっくりの地蔵が祀られており、精力快復の特効があるという伝承があり、密かな霊験を今に伝えています。
こうした道祖神などの数多く見られる川上の里は、原始農耕時代より拓かれ、川に沿って種生(たなお)、矢持への奥地開拓の拠点としての位置を占めていたことを物語っています。
昭和64年/平成元年目次
101.金の鳥を納めた「唐櫃石(からひついし)」の謎 昭和64年1月号
102.文殊の不動さん 平成元年2月号
103.座禅石と種子曼荼羅 平成元年3月号
104.雨乞いや豊作祈念のかんこ踊りの歌本 平成元年4月号
105.原始農耕時代の遺物か?川上の道祖神 平成元年5月号
106.黒住教名賀教会所 平成元年6月号
107.伝説「おまん田」 平成元年7月号
108.蔵骨器が多数出土した安田中世墓 平成元年8月号
109.笹谷峠に建つ三つの村境地蔵 平成元年9月号
110.伊勢路の宿 平成元年10月号
111.むかしの如来道 平成元年11月号
112.信仰の拠点に立つ地蔵姿の庚申(こうしん)さん 平成元年12月号