妙楽地の秋葉さん
妙楽地の秋葉さん
平成3年6月号
妙楽地のマル仲製材所を右に折れ、木津川にかかる稲広橋を渡り、約100m進むと「秋葉さん」の入口である。ここから、急な坂を150m程登ると、高台に火伏せの秋葉神社が祀られている。
「地震・雷・火事・おやじ」といって、古今火事の恐ろしさは言をまたない。土地の古老にきくと、江戸時代末期、天保の頃に、水利の悪い妙楽地に大火があった。
里の有志が相談して、火伏せの霊験あらたかな遠州(静岡県)の秋葉大権現に詣で、御分霊をうけて里を見渡す高台の現社地に創祀したとのこと。大災にあいやすい日本の木造建築なので、秋葉権現信仰が全国津々浦々で盛んになったことがうなずける。

以来、里の人達は春4月15日、秋10月23日の祭礼に社前に集まって火災防止の祈願をしたあと、持参の御馳走をひろげて、おこもりの祝座をひらく。村を愛した先人の遺徳を偲んで楽しい祭りのひとときである。
明治40年から41年にかけて旧上津村のお宮60余社が、現在の比々岐神社に合祀されたが、その中に秋葉神社、愛宕社など火の神を祀るお宮が10数社含まれている事を見ても、古代の人の火を恐れ火の神に祈りを捧げた信仰の歴史が偲ばれる。
平成3年目次
125.川上の地蔵堂と菩薩立像 平成3年1月号
126.八柱神社の巨岩 平成3年2月号
127.霧生中山の道 平成3年3月号
128.天正の伊賀乱をしのぶ 小鴨(こがも)氏城跡 平成3年4月号
129.珍しい高尾の石室・石仏地蔵 平成3年5月号
130.妙楽地の秋葉さん 平成3年6月号
131.町指定文化財 天照寺の石造五輪塔 平成3年7月号
132.全国でも数少ない蔵王権現の石像 平成3年8月号
133.戦後開拓の歴史を刻む老ヶ野・古田・青山道路 平成3年9月号
134.奉供養 勧進橋の碑 平成3年10月号
135.霧生の鹿島神社 平成3年11月号
136.6,7世紀の代表的な墓 羽根・峯台(みねだい)一号古墳 平成3年12月号