小さな磨崖仏(まがいぶつ)阿保の子安地蔵さん
小さな磨崖仏(まがいぶつ)阿保の子安地蔵さん
平成8年7月号
磨崖仏とは岩壁に彫刻された仏像のことで、室生口大野の大野寺や上野市中の瀬の磨崖仏が有名であり、青山町では、青山峠の地蔵、老川・極楽寺の地蔵、高尾鈴又の不動明王、奥鹿野・久昌寺の梵字(ぼんじ)の曼荼羅(まんだら)の4体が知られているが、阿保にも小さいながら磨崖仏があることがわかった。

阿保東部の宝楽山団地へ上がる手前の町道の急カーブ付近に「子安(こやす)地蔵」と標示した石碑が建ち、そこから町道に沿って左側を少し下ったところに、小さな木造のお堂があり、その奥の岩壁に彫刻した「子安地蔵」が祭られている。
それは縦1.6×横1.3mほどの小さい垂直面の地上近くに、蓮(はす)の花の台の上に、右手に錫杖(しゃくじょう)、左手に宝珠(ほうじゅ)を持った、高さ41cmの地蔵菩薩(ぼさつ)の立像(りゅうぞう)が彫刻されている。江戸時代の作と思われるが銘文は無く、長い間の風雨にさらされて、やや風化している。
この地蔵さんは、以前は道路から少し離れた高所にあったが、昭和30年代の初め、住宅団地造成に先立ち、道路を拡張し高く上げる工事の際に、近所の信仰心の厚い方が今後の世話を引き受けることで、埋没の危難を逃れた。
その篤志家は、木造の小堂を建てて、幕・鈴・祭壇・仏具などを備え、付近には「さつき」などの植樹をし、常にお参りして、お供えや清掃に励んでおられる。
子宝に恵まれたい方や安産を願う方、その他安全息災を祈る方など、近隣はもとより、遠方からも多くのお参りがあるそうである。
平成8年目次
185.笛吹の伝説と千方(ちかた)の四鬼窟(よつおにいわや) 平成8年1月号
186.山中半右ヱ門 本陣跡碑 平成8年2月号
187.最も代表的な古墳 羽根・狐塚古墳群 平成8年3月号
188.ロマンただよう桜峠の春 平成8年4月号
189.奥鹿野の菩提寺 保徳山久昌寺 平成8年5月号
190.霧生の鉱山跡 平成8年6月号
191.小さな磨崖仏(まがいぶつ)阿保の子安地蔵さん 平成8年7月号
192.老川の中世城館 若山氏城 平成8年8月号
193.権現谷の双つ渕(ふたつぶち) 平成8年9月号
194.腰山の峯道(みねみち) 平成8年10月号
195.朱の欄干と金色の擬宝珠 大村橋 平成8年11月号
196.矢生(やお)中学校の上高尾分校 平成8年12月号