小川内で発見された石器の原石
小川内で発見された石器の原石
昭和56年5月号
むかし昔そのまた昔、9万数千年も前の旧石器時代の人類が、石のナイフや石の矢じりをつくるために用いた、サヌカイト原石2個と、石の斧1個が、種生(たなお)の小川内(おごち)で発見されている。
その場所は、明治のはじめ頃まで八王子社が祀られていた森の近く、その時は、昭和15年の5月、土地の農業川西石松という人が畑を耕作中に偶然掘り出したものである。現在は、種生神社に秘蔵され、町の文化財に指定されているが、昭和36年に志摩郷土史会長、三重郷土史会理事の肩書きを持つ鈴木敏雄氏が鑑定し、この石器の古さと時代が証明された。
鑑定書つきのサヌカイト原石と石斧(種生神社蔵)
石器とは、鉄や青銅などの金属製品をつくることを知らなかった時代の人びとが、硬い石を更に硬い石で割って鋭い刃物状につくったり、磨いて刃をつけたりした石の道具(主として武器)のことである。人類がこの地球上に姿を現したのは約200万年前だといわれるが、火を使うことを覚え、外の動物と一線を画するようになった50万年前を経て、1万年前までの期間を旧石器時代という。
この間には、前後5回にわたる氷河期があり、日本もまたシベリアの大陸と地つづきであった。この時代に、きびしい寒さからのがれ、暖かい南の地を求めようとするマンモス像など動物が続々日本へ移動し、人類もその後について来たといわれる。そんな大昔からこの地では、石器を加工する人間が住んでいたことになり、全く気の遠くなる話である。
昭和56年目次
7.伊勢参りの僧が再建した護国山天照寺 昭和56年1月号
8.阿保親王といわれる息速別名の墓 昭和56年2月号
9.寺と桜と滝とうたわれた名所の滝仙寺 昭和56年3月号
10.万葉の桜がしのばれる阿保山の桜 昭和56年4月号
11.小川内で発見された石器の原石 昭和56年5月号
12.奥鹿野で語りつがれた神穴伝説 昭和56年6月号
13.深瀬渓谷の隠れた名滝高尾観音瀑 昭和56年7月号
14.湯神楽の笹は水難除け水神まつり 昭和56年8月号
15.天正伊賀乱の緒戦地伊勢路掛田城 昭和56年9月号
16.青山最古の開拓地か羽根塚原遺跡 昭和56年10月号
17.秋まつりの伝統行事獅子舞い 昭和56年11月号
18.天狗の難所がトンネルに伊賀の中山 昭和56年12月号