絶版になった旧青山町の「あおやま風土記」を紹介します

椎の古木

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椎の古木

昭和60年3月号

 霧生の村里に入ると先ず目に付くのは、鹿島神社の神域500年から700年を越えるであろう杉の大木が数本天を突くように聳え、足元を匿すように欅などの落葉樹の枝々が白く見える。この森の南、長田川を挟んで菊田典明氏の宅地内に千年木と思わせるような古木の椎の木がある。

画像の説明

 幹には直径20糎ほどの蔦が巻きつき正確には測れないが「周囲約5m」ひだをつけたような幹、地面に荒々しく盛り上がった根、厳しい自然を生きて来た姿は唯驚くばかりである。

 附近一帯は神社の森に続いて昼でもうす暗く杉や樫欅や楓、竹などが生い繁っている。その昔(400年くらい前の頃)から、この土地の土豪結城加州の屋敷で背は長田川に沿って約60m程を2mの高さに土塁を築きその表面を石塁で補強、内側は一段低く堀をめぐらし、西から南にかけて石垣と堀になっていたらしい。

 このような条件の中で育った椎の木はこの近在にはなく、唯、一志郡美杉村で数本見られる。

 花季には蜂の餌場となり遠くから見ると白い傘を広げたような形で家の上を覆っていたが、長い年月幾多の嵐に苛まされて白く枯れた枝が目立ち、今では3本の指を広げた格好にまで衰え、秋には千籾の中によく混じっていた椎の実も近年は殆ど見る事はできず、多かった葉もめっきり少なく、巻きついた蔦の葉がその役割りを果たしているかのようで、この世に生きる事の難しさは植物の世界でも全く同じである。この椎の木もこの村の栄枯盛衰をつぶさに眺めてきた苦労人いや苦労木である。




昭和60年目次
53.五智如来と勝地の里ー北山辺りー 昭和60年1月号
54.南朝の要害・・・高尾の城跡 昭和60年2月号
55.椎の古木 昭和60年3月号
56.江戸時代の上野街道 かんじょう坂 昭和60年4月号
57.岡田の括り地蔵への参詣 世直し捕縛(しばられ)地蔵尊 昭和60年5月号
58.いまも生きる石の燈籠 平穏と安全を希求して 昭和60年6月号
59.県指定天然記念物クマガイソウ群落 昭和60年7月号
60.青山の語源になった阿保山の昔話 昭和60年8月号
61.生活に密着した青山の竹林 昭和60年9月号
62.古刹 上津山宝珠院 昭和60年10月号
63.福丸こっこ 昭和60年11月号
64.阿保地名考 昭和60年12月号

目次昭和61年

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