絶版になった旧青山町の「あおやま風土記」を紹介します

瀧の権現さん

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瀧の権現さん

昭和62年6月号

 木津川にそって大山田村に通じる県道伊賀青山線の町はずれが滝の集落である。緑が深くせせらぎの美しい集落で、集落はずれ上切橋のたもとから右に入る矢上林道がある。

 この谷は、おそらく伊賀一の桧の美林であろう。この林道にそって、木津川の支流、奥の院川の渓流があり、この幽邃(ゆうすい)の地に滝の権現さん「熊野三所神社」が祀られている。御本殿は桃山建築の極彩色で元亀3年(西暦1572年)の棟札がある。30m余もそそり立つ巨岩の上に建っていて、拝殿から本殿にのぼる参道もけわしい。境内を流れる奥の院川には"養老の滝“がかかり、紅葉が殊の外すばらしい。

 100m上流に小瀑があって磨崖仏が彫られている。巨木の神樹もまつられている。

画像の説明

 11月30日が祭礼で、今も昔そのままのしきたりで祭りが営まれている。頭屋は四戸で、来年の頭屋四戸も見習いを兼ねて、補佐する。紋付羽織袴の頭屋代表の挨拶のあと、古式の「しゅうし」
が始まる。アズキ御飯と大根の味噌汁のほか“たたきごぼう”が配られる。ごぼうを蒸したあとたたいて焼いて、とうがらし味噌をぬる。素朴な収穫の秋の味わいがする。

 昔の「しゅうし」は女人禁制だったが、近年は女性も参列できるようになり、それだけが昔と様変わりした点だという。昼なお暗い参道の苔通は素晴らしく、雨のあとの初夏の苔道は京都の苔寺の感じがする。

 うれしいにつけ悲しいにつけ、永い歳月滝区の人達がお祈りを捧げてきた社叢の若芽が萌えている。




昭和62年目次
77.いまも残る老川如来への道 昭和62年1月号
78.青山のお大師さん 昭和62年2月号
79.江戸時代から伝わる諸木のドンド 昭和62年3月号
80.江戸時代初期の一里塚 千塚さん 昭和62年4月号
81.磨崖仏だった岩鼻(いわっぱな)地蔵 昭和62年5月号
82.瀧の権現さん 昭和62年6月号
83.社日(しゃにち)さん 昭和62年7月号
84.神宮崇敬の象徴参宮街道筋の石造常夜灯 昭和62年8月号
85.珍しい石造りの牛頭天王の社 昭和62年9月号
86.奥山権現 昭和62年10月号
87.羽柴砦 昭和62年11月号
88.町内で最も古い石塔 岡本家の十三重塔 昭和62年12月号

目次昭和63年

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