絶版になった旧青山町の「あおやま風土記」を紹介します

珍しい高尾の石室・石仏地蔵

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珍しい高尾の石室・石仏地蔵

平成3年5月号

 高尾の酒屋バス停から南に100m。旧道の谷川沿いに珍しい石堂に囲まれた石仏地蔵がある。県道のカーブの真下になって常緑樹に覆われているので気付く人はほとんどいない。

画像の説明

 この石仏地蔵は、溶結した凝灰岩(ぎょうかいがん)に陽刻されており、体高90cm、巾50cm余り、右手に錫杖、左手に宝珠を持ち、顔はおだやかな表情で、足はくつをはき、蓮弁の上に立つ。どこにでも見られる地蔵さんだが、上部に日輪と月輪をいただき、後背に斧か鎌のようなものを着けている。このような石仏地蔵は町内はもとより、伊賀地方では見られない。

 さらに、この石仏地蔵は、高さ1m、巾1mの石室に収められた珍しい存在である。三面石垣ではあるが、前面両側に高さ1m余、巾30cmの門柱があり、左柱に「顔心 村中」と刻まれている。上は厚さ15cmの大きな一枚岩で覆われていて、雨露にぬれることはない。

 石仏地蔵には刻銘が見られないが、蓮弁の線刻から、室町時代か鎌倉期のものと推測できるが、石室は野ざらしのままにしておくに忍びず、後世に造られたものと思われる。

 この地は、太古から阿保からの道と名張からの道の合流するところであり、古くから開けたといわれ、その旧街道に建てられたものであろう。

 古老の話しによれば、この地蔵の傍に大きな桜と欅(けやき)の木があったが、明治初年の道路改修のため伐採されたといわれ、今はその萌芽からの欅の若葉に覆われている。

 前庭には五輪塔の宝珠や台石が散らばっているが、この地蔵と石室は、激しい交通の震動をよそに、子供の病気によく効くという伝説の信仰に支えられて建ちつくしている。




平成3年目次
125.川上の地蔵堂と菩薩立像 平成3年1月号
126.八柱神社の巨岩 平成3年2月号
127.霧生中山の道 平成3年3月号
128.天正の伊賀乱をしのぶ 小鴨(こがも)氏城跡 平成3年4月号
129.珍しい高尾の石室・石仏地蔵 平成3年5月号
130.妙楽地の秋葉さん 平成3年6月号
131.町指定文化財 天照寺の石造五輪塔 平成3年7月号
132.全国でも数少ない蔵王権現の石像 平成3年8月号
133.戦後開拓の歴史を刻む老ヶ野・古田・青山道路 平成3年9月号
134.奉供養 勧進橋の碑 平成3年10月号
135.霧生の鹿島神社 平成3年11月号
136.6,7世紀の代表的な墓 羽根・峯台(みねだい)一号古墳 平成3年12月号

目次平成4年

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