絶版になった旧青山町の「あおやま風土記」を紹介します

県指定天然記念物クマガイソウ群落

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県指定天然記念物クマガイソウ群落

昭和60年7月号

 青山町内にはラン科の植物(エビネやさぎ草など)が約20種類程自生しているなかで、このクマガイソウは、日本全国に分布し、野生ランのなかでは大きいので目につきやすく、特に関東地方では人里近い丘陵に群生しているのが見られる。

画像の説明

 青山町では霧生や高尾で群落が見られ、特に霧生のクマガイソウ群落が昭和11年1月に三重県の天然記念物に指定されています。姿は茎が直立し縦ひだが著しく、ハサミで丸く切り取ったような2枚の大きい葉は扇状に対生し、茎、葉裏ともに白い毛があり4,5月にかけて葉の中心部から花茎が直立し大きな花を横向きに一つつける。花の下に苞葉が1枚ある。花弁萼弁はやや淡緑色で平開するが唇弁は独特の大きな袋状、袋の表面は紫紅色の網目のような脈が走り鮮やかである。

 和名の熊谷草はその花の型が昔源平合戦一の谷海岸で熊谷次郎直実が母衣(ほろ)を背負い扇をあげて平家の若武者平敦盛を呼びもどしている図に似ているところからこの名がついたと云われている。

 繁殖は地下茎で山地の陰湿な風とおしのよい樹下に自生している。また熊谷草に対して敦盛草は平敦盛の背負った母衣に見立てた名であるが、この草は夏の暑さには耐えにくいのか関東地方以南ではあまりなく中部山地から東北地方に遠くはシベリアあたりまで分布しているようである。

 クマガイソウ群落は霧生の山地にあり天然記念物に指定された当事の昭和11年頃には50aにわたって群生していたが、植林などによる周囲の山林環境の変化と最近の園芸ブームによって乱獲され激減し、現在では容易に見ることはできなくなった。




昭和60年目次
53.五智如来と勝地の里ー北山辺りー 昭和60年1月号
54.南朝の要害・・・高尾の城跡 昭和60年2月号
55.椎の古木 昭和60年3月号
56.江戸時代の上野街道 かんじょう坂 昭和60年4月号
57.岡田の括り地蔵への参詣 世直し捕縛(しばられ)地蔵尊 昭和60年5月号
58.いまも生きる石の燈籠 平穏と安全を希求して 昭和60年6月号
59.県指定天然記念物クマガイソウ群落 昭和60年7月号
60.青山の語源になった阿保山の昔話 昭和60年8月号
61.生活に密着した青山の竹林 昭和60年9月号
62.古刹 上津山宝珠院 昭和60年10月号
63.福丸こっこ 昭和60年11月号
64.阿保地名考 昭和60年12月号

目次昭和61年

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