行者山砦(とりで)跡
行者山砦(とりで)跡
平成6年7月号
手入れの行き届いた、腰山あみだ公園の花しょうぶ園を見ながら急な坂道を桜やつつじ、そして、馬酔木(あせび)の木の下をくぐり抜けて登って行くと、石段と阿弥陀堂の屋根が見えてくる。石段の手前から右へ狭い山道を木々の間からもてれくる陽光に送られて峠へ、左は諸木字庄原へ通じ、右を山の尾根つたいに100mほど登ったところに中世の城館跡「行者山砦」がある。
山の頂を削平して造った砦で「三重の中世城館」誌には、「諸木と腰山地区の境界の山峰にある行者山の城と呼ぶのは、行者を祀った跡があるところから呼んだものである。所在地は諸木字庄原になるが、地形から腰山地区の土豪の城ではなかろうか」と書かれており、砦の規模は50m×60mで、内部は16m×30mの楕円形に近い。
四方に土塁がめぐり、北と南に堀切がある(城主は不明)。室町時代の下期(1550年頃)から安土桃山時代の初期(1580年頃)までに構築され、天正伊賀の乱の頃に焼かれたか、壊されたものであろう。砦跡の中ほどに、ひと際大きな桧林の所に行者を祀った跡らしきところがある。四方の土塁や堀切などの遺構も比較的はっきりと残っている。
諸木の城本さんの裏山にも中世の城館跡(諸木氏城)があるが、行者山砦とは少し低いが極めて近く、当時としては互いに連絡し合うには大変便利であったのではと思われる位置である。現在は人工林で、山は埋まり、砦跡のある山頂すら確認するのは困難になってきている。
平成6年目次
161.種生天神社と小竹城跡 平成6年1月号
162.青山峠の今昔 平成6年2月号
163.霧生の灯籠はん 平成6年3月号
164.同所に三体三様の姿 羽根の庚申(こうしん)さん 平成6年4月号
165.街道いま、むかし 古田の笹峰峠 平成6年5月号
166.妙楽地の馬頭観音 平成6年6月号
167.行者山砦(とりで)跡 平成6年7月号
168.宝厳寺(ほうごんじ)裏山の霊場 二十一大師めぐり 平成6年8月号
169.街道いま、むかし 乃(野)木山(のぎやま)の道 平成6年9月号
170.熊野権現(ごんげん)奥の院さん 平成6年10月号
171.霧生高山林道の大日如来(だいにちにょらい) 平成6年11月号
172.初代の阿保駅 近鉄・比土(ひど)駅の今昔 平成6年12月号