諸木氏城跡
諸木氏城跡
平成2年7月号
福川から諸木に通じる道と老川から大倉川に沿って諸木に通じる道が交わる所(石打橋)から東方に見える山の中腹に、室町時代(1390年~1570年)に築かれた城跡がある。諸木氏城と呼ばれ四方を約2m程の高さの土塁で囲み、内部は15m四方の一郭と、堀切りをはさんで30m×10m西と東に土塁のある一郭の2つの郭を持った城跡である。

今から約400年前の天正伊賀の乱頃、伊勢地方を領していた北畠氏の家臣帳に、諸木村から諸木左衛門督と諸木傳助の名が、また伊乱記には諸木与助が種生国見山砦に拠ったとあるところから、この諸木氏一族の城であろう。矢持地区では、このような中世の城館跡が「三国地志」に9か所記録されているが、現在発見されている4城跡のうち、この諸木氏城は比較的遺構がはっきりと残っている。
諸木の中心部から山越えで庄原に至る峠は、堀切りの一部を道路に利用し、庄原から腰山に至る峠付近にも中世の城跡(行者山城城主は不明)があるが、諸木氏城より高い場所にあり、当時は両城ともよく見える位置であるので、何かと便利であったのではないかと思われる。また福川、老川方面からの状況が見渡せる絶好の場所に位置している。
現在では杉や桧の林となり、外部からは城跡を見ることはできない。
平成2年目次
113.伊賀・伊勢の境 布引峠の今昔 平成2年1月号
114.伊賀の中山 平成2年2月号
115.諸木のふれあい広場 平成2年3月号
116.指形の道標が示す川上の大円寺 平成2年4月号
117.江戸の文化を今に伝える伊賀名句集 平成2年5月号
118.伊勢路の天王はん 平成2年6月号
119.諸木氏城跡 平成2年7月号
120.県指定文化財「たわらや」の看板類 平成2年8月号
121.県指定天然記念物 奥山権現のブナ林 平成2年9月号
122.名張の沃野(よくや)をうるおす新田水路 平成2年10月号
123.弘法大師の三度栗 平成2年11月号
124.初代斎王の頓宮跡か照皇宮神明社(しょうこうぐうしんめいしゃ) 平成2年12月号