雨乞いや豊作祈念のかんこ踊りの歌本
雨乞いや豊作祈念のかんこ踊りの歌本
平成元年4月号
阿保東部の某家に、阿保東・西区のかんこ踊りの歌本2冊が保存されている。1冊は慶応3年(1867)の書写、他の1冊は明治6年(1873)に、修正転写したものである。内容は世の中踊り、高田踊り、屋敷踊り、陣立踊り、お宮踊り、お神楽踊り、お寺踊り、帷子(かたびら)踊り、浪花順逆(なにわじんやく)、大国順逆、桜順逆など14曲の歌詞である。
かんこ踊りは、江戸時代中期頃から各地で神事として、また雨乞いや豊作、厄払いなどを祈念して踊ったようであり、東・西区の各集団は、指揮者一人、歌出し(歌を歌う)数人、貝吹(法螺貝を吹く)二人、太鼓打ち(地上に据えた大太鼓を打ちながら踊る)数人、中踊り(中立=なかだち=ともいい主役。桜の造花を飾った、しない竹を、長い竹の先に、花火の開いたようにつけたものを背負い、胸に大きい鼓=つづみ=のような羯鼓=かっこ=を掛け、両手の稃=ばち=で打ち鳴らしながら舞う)4人、その他棒振りなど多勢で編成し、この東・西2集団が同時に、華美な花笠法被(はっぴ)姿で歌に合わせて踊り舞う姿は、まことに華麗、壮観であった。
この歌本には、慶応3年、明治6年、同16年(1883)、同19年に踊ったと記録されているが、その後の記録はない。最近では大正9年(1920)、昭和6年、同27年に踊ってからは踊っていない。
この外、町内では、老川(花踊り)と諸木(神踊り)に歌本が残されているらしいが、踊りは久しく中絶していて残念である。
昭和64年/平成元年目次
101.金の鳥を納めた「唐櫃石(からひついし)」の謎 昭和64年1月号
102.文殊の不動さん 平成元年2月号
103.座禅石と種子曼荼羅 平成元年3月号
104.雨乞いや豊作祈念のかんこ踊りの歌本 平成元年4月号
105.原始農耕時代の遺物か?川上の道祖神 平成元年5月号
106.黒住教名賀教会所 平成元年6月号
107.伝説「おまん田」 平成元年7月号
108.蔵骨器が多数出土した安田中世墓 平成元年8月号
109.笹谷峠に建つ三つの村境地蔵 平成元年9月号
110.伊勢路の宿 平成元年10月号
111.むかしの如来道 平成元年11月号
112.信仰の拠点に立つ地蔵姿の庚申(こうしん)さん 平成元年12月号