青山最古の開拓地か羽根塚原遺跡
青山最古の開拓地か羽根塚原遺跡
昭和56年10月号
青山の水を集めた木津川と前深瀬川が、羽根西部で合流し、上野市の高瀬へ向けて大きく迂回する。内側の地域を、宇塚原という。塚原とは、その名のとおり。古代墳墓(塚)の野原という意味で耕土の中に土器片などが多数含まれていることから、青山黎明期の遺跡として注目されてきた。
今年ここに、羽根と高瀬を結ぶ広域道路が計画されたことから、青山町教育委員会が発掘調査を実施し、8月29日現地でその説明会が行われた。当日は小雨模様であったが、熱心な郷土史研究家など100人あまりが出席し、千数百年の昔、この地に住みついた先人たちのタイムカプセルを開き見る想いで、露出された横穴式石室や出土品に見入っていた。
青山地区は、大和の古代王朝と密接な関係をもった豪族の居住地だったといわれ、阿保親王陵をはじめ、百基あまりの古墳が確認されている。しかし発掘調査されたのは今回が最初で、須恵器(すえき)の坏(つき)、高坏(たかつき)、提瓶(ていべ)、土師器(はじき)の碗(わん)、鉄鏃(てつぞく)、刀子(とうす)が十数点出土し大きな成果であった。
今回の調査で発見された古墳は道路敷となる部分の一基だけであったが、他にも点在していることは確実である。そしてそのことは、塚原が青山古代人たちの住居でもあったことの実証だという。また羽根の古老は、ここの土は黒ぼくの肥土なので、それに目をつけた大昔の人が、青山で最古に開拓した場所だろうといっている。
発掘調査説明が行われた塚原遺跡
昭和56年目次
7.伊勢参りの僧が再建した護国山天照寺 昭和56年1月号
8.阿保親王といわれる息速別名の墓 昭和56年2月号
9.寺と桜と滝とうたわれた名所の滝仙寺 昭和56年3月号
10.万葉の桜がしのばれる阿保山の桜 昭和56年4月号
11.小川内で発見された石器の原石 昭和56年5月号
12.奥鹿野で語りつがれた神穴伝説 昭和56年6月号
13.深瀬渓谷の隠れた名滝高尾観音瀑 昭和56年7月号
14.湯神楽の笹は水難除け水神まつり 昭和56年8月号
15.天正伊賀乱の緒戦地伊勢路掛田城 昭和56年9月号
16.青山最古の開拓地か羽根塚原遺跡 昭和56年10月号
17.秋まつりの伝統行事獅子舞い 昭和56年11月号
18.天狗の難所がトンネルに伊賀の中山 昭和56年12月号