伊勢路の天王はん
伊勢路の天王はん
平成2年6月号
天王はんは、初瀬街道の宿場町として栄えた伊勢路の旧街道の中ほどの広い境内で、伊勢路の家並みを一望できる見晴らしのよい高台にある。
「境内には、祇園さんで親しまれている建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)を祀る津島神社が鎮座する。昔から里人などは“天王はん”と親しみ、永い年月、喜びにつけ、悲しみにつけ、天王はんの坂を登って祈りを捧げた。
明治40年には比々岐神社へ合祀するまで、旧上津村の神社の社格で伊勢路区の氏神として信仰されてきた。
その後、区民の願いで御分霊を旧社殿に祀り現在にいたっている。

7月13日の例祭(祇園祭)は、今も昔ながらにおこなわれている。早朝から当人の家に集まって奉納の花切りをする。当人の家では屋敷内を美しく片付け講員を迎える。当人に不幸ごと等ができると一年休んで次番の当人に花切りの宿を譲るのが習わしになっている。
七座の当人宅で、身を清めて作った美しい造花が、この広い境内に奉納されると祭りは最高潮となる。近頃は、祭典のあと神賑行事としてカラオケ大会、ビール早飲み大会などが催され区民挙げての夏祭りである。ふるさとの祭りは今も昔ながらに永い歴史をきざんで息づいている。
夏蝉の鳴く天王はんの境内に立って、宿場町伊勢路の今昔を想うと感無量である。
今年も間もなく天王はんの祇園祭である。
平成2年目次
113.伊賀・伊勢の境 布引峠の今昔 平成2年1月号
114.伊賀の中山 平成2年2月号
115.諸木のふれあい広場 平成2年3月号
116.指形の道標が示す川上の大円寺 平成2年4月号
117.江戸の文化を今に伝える伊賀名句集 平成2年5月号
118.伊勢路の天王はん 平成2年6月号
119.諸木氏城跡 平成2年7月号
120.県指定文化財「たわらや」の看板類 平成2年8月号
121.県指定天然記念物 奥山権現のブナ林 平成2年9月号
122.名張の沃野(よくや)をうるおす新田水路 平成2年10月号
123.弘法大師の三度栗 平成2年11月号
124.初代斎王の頓宮跡か照皇宮神明社(しょうこうぐうしんめいしゃ) 平成2年12月号