絶版になった旧青山町の「あおやま風土記」を紹介します

日本三奇鐘の一つ 大村神社の虫食鐘

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日本三奇鐘の一つ 大村神社の虫食鐘

昭和63年12月号

 阿保の大村神社の、有名な虫食鐘を知らぬ人は、先ずないだろう。

 神社に釣鐘があるというのは珍しいが、明治の初め頃までは、神仏習合と言って、神さんと仏さんとを同じ場所にお祭りすることが多かった。この鐘は大村神社の宮寺(別当寺又は宮坊ともいう)として、今の駐車場のところにあった禅定寺(ぜんじょうじ・真言律宗)のもので、明治3年(1870)神仏分離による廃寺の際に、大村神社のものとして残されたものだ。

画像の説明

 江戸時代の寛永(1640頃)年間、禅定寺の覚祐という和尚さんが、諸国から寄進を集めて、明暦2年(1656)に鋳造したものだが、その中に大和国葛城の豪家の娘さん愛蔵の鏡を鋳込んだところ、その「たたり」で死んだ娘さんの亡霊によって、鐘乳(こぶ)が全部落ちたといわれる。

 科学的には、鋳造後の金属の変質によるものだろうが鐘を食う虫の正体は、この娘さんの「うらみの一念」との神秘的な伝説があり、日本三奇鐘の一つだといわれている。

 では、他の二つの奇鐘はというとはっきりしないが、鋳造のとき、誤って赤ん坊を鋳型の中に落としたまま鋳込んだため、母親の悲しみにより鳴らないといわれる、京都府宮津市にある成相寺(なりあいじ)の鐘や、娘さんが蛇体となって巻きつき、鐘に隠れた男を焼き殺したという安珍・清姫伝説で名高い、和歌山県川辺町にある道成寺(どうじょうじ)の鐘などが、これに相当するのではないだろうか。




昭和63年目次
89.ゴルフ場の中に珍しい高尾・古田の古城跡 昭和63年1月号
90.勝福寺の五智如来 昭和63年2月号
91.霧生の八幡さん 昭和63年3月号
92.信仰と芸術の調和 安養寺の竜の棟瓦 昭和63年4月号
93.原型どおりに新築復元された老川如来の山門 昭和63年5月号
94.茶丸稲荷さん 昭和63年6月号
95.諸木の安楽寺 昭和63年7月号
96.桃山時代の華麗な建造物 大村神社の宝殿 昭和63年8月号
97.禅寺の山門に建つ 不許葷(くん)酒の碑 昭和63年9月号
98.滝仙寺(りゅうせんじ)の文化財 昭和63年10月号
99.霧生村内検帳 昭和63年11月号
100.日本三奇鐘の一つ 大村神社の虫食鐘 昭和63年12月号

目次昭和64年/平成元年

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