珍しい石造りの牛頭天王の社
珍しい石造りの牛頭天王の社
昭和62年9月号
私たちの周辺には、数多くの石神や地蔵さんが散在し、夏の草や秋の花に埋もれています。
これらの名も知れない石の神や野仏も、建てられた当時は、人々の願いを込めた厚い信仰に支えられて、今の世まで伝えられてきたのでしょう。
夏を彩る京都の祇園祭の流れを汲んで、町内でも祇園さんや天王さんの社のあるところでは、大きな竹を割って、花や餅を飾って盛大なお祭りが今も伝えられています。
祇園さんの元祖は、京都の八坂神社が高句麗の帰化人、八坂造がインドの祇園精舎の守護神である「牛頭(ごず)天王」を祭ったことに始まり、この地域一帯が祇園と呼ばれ、厄除け開運の神として全国に広まったといわれます。
町内でも「牛頭天王」を祭った「国見天王社」が古くから知られ、江戸の藩史にも記載されています。
同じ牛頭天王を祭ったものとして、高尾の鈴又入口に珍しい石造りの天王さんがあり、正面の扉には「牛頭天王」と刻され、即面石には「文化十二年」左には「願主 高尾氏」とあります。
もとは広い岩盤の上に敷地があり石段もありましたが、道路改修のため削り取られ、狭くなっています。江戸の藩史「宗国史」にも記載されており、建てられた以前から祭られていたものと思われます。この牛頭天王は、当事鈴又に居を構え、庄屋であった高尾貞光氏が、願主となって建立したと伝えられています。
怨霊、疫病への恐怖を払うための、素朴な村人の願いをこめて「天王講」などの風習が今も残っています。
昭和62年目次
77.いまも残る老川如来への道 昭和62年1月号
78.青山のお大師さん 昭和62年2月号
79.江戸時代から伝わる諸木のドンド 昭和62年3月号
80.江戸時代初期の一里塚 千塚さん 昭和62年4月号
81.磨崖仏だった岩鼻(いわっぱな)地蔵 昭和62年5月号
82.瀧の権現さん 昭和62年6月号
83.社日(しゃにち)さん 昭和62年7月号
84.神宮崇敬の象徴参宮街道筋の石造常夜灯 昭和62年8月号
85.珍しい石造りの牛頭天王の社 昭和62年9月号
86.奥山権現 昭和62年10月号
87.羽柴砦 昭和62年11月号
88.町内で最も古い石塔 岡本家の十三重塔 昭和62年12月号