霧生の鹿島神社
霧生の鹿島神社
平成3年11月号
霧生の里に入ると四方を囲んだ山間から霧の立ち上る光景と鹿島神社の森が見えてくる。老樹がうっそうと茂り立木の間から社殿から見えかくれする。
「阿保ヨリ迂坐是ヨリ夏見ヘ遷坐ナシ玉フト云享禄元年戌子ノ上梁文アリ」と江戸時代に書かれた書物「三国地志」にこの神社の事が記されている。創始年代は不詳であるが、亨禄元年戊子(つちのえね)(1528年)と慶長13年戊申(つちのえさる)(1608年)のものとの2枚の棟札が町文化財に指定されている。

この神社は霧生村の氏神であったばかりでなく、近郷の総社的な地位にあったらしく亨禄元年の棟札には、近郷の郷士らが多く参加したことや、棟上から3年後に上葺軒付開始との記録があること等、相当な大工工事があったらしい。
また、この時代の国情は、応仁の乱が終って足利氏が衰退して戦国時代の始まりの頃で、武田信玄、上杉謙信、少し遅れて織田信長らが生れ、社会は激しく変る時代で、この棟札からは何も感じ取ることができない。
昭和6年の造営に書かれたと思われる壁画が、神殿の両側面に残り、さらに神殿のそで板の裏面に「昭和6年9月本殿塗装」と絵師の住所氏名の添え書きも残っている。今年は神社の式年造営の年で、区民挙って準備を勧め、神殿、境内の補修整備も終わり、10月20日には造宮式典が行われた。
平成3年目次
125.川上の地蔵堂と菩薩立像 平成3年1月号
126.八柱神社の巨岩 平成3年2月号
127.霧生中山の道 平成3年3月号
128.天正の伊賀乱をしのぶ 小鴨(こがも)氏城跡 平成3年4月号
129.珍しい高尾の石室・石仏地蔵 平成3年5月号
130.妙楽地の秋葉さん 平成3年6月号
131.町指定文化財 天照寺の石造五輪塔 平成3年7月号
132.全国でも数少ない蔵王権現の石像 平成3年8月号
133.戦後開拓の歴史を刻む老ヶ野・古田・青山道路 平成3年9月号
134.奉供養 勧進橋の碑 平成3年10月号
135.霧生の鹿島神社 平成3年11月号
136.6,7世紀の代表的な墓 羽根・峯台(みねだい)一号古墳 平成3年12月号