天満神社の“珍しい山の神々”
天満神社の“珍しい山の神々”
昭和61年5月号
「野仏の草に埋まる五月哉」若草のもえる初夏の野辺には、いまはほとんど顧みられることもない野仏や石神が草に埋もれそうになっているのを見かけます。
誰がさしたか花一輪も見られ、のどかな風物詩となっています。
町内の野仏や石神などを数えれば200余りになりますが、最も多いのは山の神で、次いで不動明王、庚申、水神、権現なども見受けられ、いまでも命日などには祭事が行われています。
なかでも山の神は正月7日、組中の全員が集り、大きな〆縄に“おつぎ”の木の鍵をかけ「大和の国の糸錦、加賀の国の銭金、伊賀の国の麦米、この山神に引き寄せよ」とはやし、大焚火を囲んで餅や酒を交わし、1年の繁昌息災を祈ります。
こうした山の神や火の神など民間信仰の無格の神も明治の神社整理によって合祀されたところも数多く見られます。
上高尾の天満神社の境内には、この合祀令のとき集められた山の神をはじめ石神が7基も残されています。
なかでも不動明王らしい石神は「宝永2年建立」として台座には「弥平」のほか13人の寄進者の名が刻まれた珍しいものであり、その隣りには錫杖と鉾を持ち馬に乗った権現の像も見られます。
今は全く祀られることのない7基の石像は巨きな神木の影にひっそりと並んで建っています。
昭和61年目次
65.高原の守り神 古田の市杵島神社 昭和61年1月号
66.伊勢路善福寺と藤堂作兵衛奉納の観音様 昭和61年2月号
67.薬師さん 昭和61年3月号
68.阿保宮道筋の「かんせい」地蔵と薬師堂 昭和61年4月号
69.天満神社の“珍しい山の神々” 昭和61年5月号
70.正治権現(しょうじごんげん)さん 昭和61年6月号
71.伝説「千方の笛吹き石」 昭和61年7月号
72.信仰と散策の浄域十七明神社跡付近 昭和61年8月号
73.旧峠道に建つ高座子宝地蔵 昭和61年9月号
74.一本松の地蔵さん 昭和61年10月号
75.河川の神 弁天様 昭和61年11月号
76.幻の温泉郷も含むなつかしの阿保小唄 昭和61年12月号