正治権現(しょうじごんげん)さん
正治権現(しょうじごんげん)さん
昭和61年6月号
勝地の東出、地区の北の方(勝地字中713番地)に、こんもりとした小さな森がある。勝地地区を見下ろす景色の良い高台に、永年土地の人々が“正治権現さん”と親しんでいる熊野神社が祀られている。
御祭神は熊野三山の神々で、今から約780余年前(西暦1200年)の正治年間に創祀されたのでこの名がある。
西暦900年頃から1200年頃にかけて特に熊野信仰が盛んであった。法皇、上皇の熊野詣でが相次ぎ、中でも後白河法皇は34度、後鳥羽上皇は28度の御幸があったという。その他女院公家の参詣は数え難く、ついに「蟻の熊野詣で」の語さえ現れる時代だった。
熊野に近い伊賀の地に、当時の「はやり神様」の御分霊をお祀りして、お陰をいただこうとした先祖たちの心が偲ばれる。明治41年に比々岐神社に合祀されたが、昭和4年、篤信の永井口兼松さんが区の有志と相談して親しく熊野三山に詣で、改めて御分霊をいただいてお祀りしたという記念碑が立っている。
勝地の人たちは、当番をきめて毎月境内の清掃奉仕をつづけ、また9月15日の例祭には、村を挙げておこもりをする。幟のはためく境内では奉賛会の有志が獅子神楽を奉納して、村中の安全を祈った先祖の人々に心を馳せる。時は流れても村里の安泰を祈る心は、今も昔も変わらない。
昼なお暗い正治権現さんの森は、今、青葉が萌え、鶯がしきりである。
昭和61年目次
65.高原の守り神 古田の市杵島神社 昭和61年1月号
66.伊勢路善福寺と藤堂作兵衛奉納の観音様 昭和61年2月号
67.薬師さん 昭和61年3月号
68.阿保宮道筋の「かんせい」地蔵と薬師堂 昭和61年4月号
69.天満神社の“珍しい山の神々” 昭和61年5月号
70.正治権現(しょうじごんげん)さん 昭和61年6月号
71.伝説「千方の笛吹き石」 昭和61年7月号
72.信仰と散策の浄域十七明神社跡付近 昭和61年8月号
73.旧峠道に建つ高座子宝地蔵 昭和61年9月号
74.一本松の地蔵さん 昭和61年10月号
75.河川の神 弁天様 昭和61年11月号
76.幻の温泉郷も含むなつかしの阿保小唄 昭和61年12月号