山の神さん
山の神さん
平成5年3月号
山をおさめる神様として、日本人に広く信仰されてきた山の神は、春には山から里に下って「田の神」となり、秋の収穫が終わると再び山に帰って「山の神」となる。
この山の神の祭日は、1月7日と10月7日、神無月に全国の神々が出雲に集まるのに「山の神」だけは、杵を盗んで餅をついていたのが見つかり、その罰によって水漬けにされたため参加できなかったので、1月7日に救い出して火で暖めてやるという祭で、村人は藁二把と餅、それにウツ木の木で作ったカギ(1月2日の仕事始めに山へ入り、ウツ木の木で鍬形のカギを家族の中で男子の数だけ作る)などを水漬けにされた場所へ持参し、藁に火をつけ、カギで「山の神」を水の中から引き上げる真似をしながら、次のような唄で音頭をとる。
「大和の国のイトワタ、伊勢の国のミソシオ、加賀越前のゼニカネ、伊賀の国のムギコメ、我が氏子へ引き寄せよ」と唄う(唱える人ごとに異なることもある)藁や古いカギの火で餅を焼き、持ち帰って七草粥に入れて祝う。
この行事は各地で行われていた。腰山地区でも昭和15年まで受け継がれていたが、何時の頃からか衰退し、現在では殆ど見られない。
お祭の日には、飛竜神社本殿の横に他の石塔と並んだ「山の神さん」に参拝するだけで、米の粉で作る白餅も姿を消してから久しい。
平成5年目次
149.古い歴史を伝える老川・若宮神社 平成5年1月号
150.上津山・宝珠院 平成5年2月号
151.山の神さん 平成5年3月号
152.神と仏と古墳が共存するお稲荷さんの丘 平成5年4月号
153.再納の由緒を伝える極楽寺の鰐口(わにぐち) 平成5年5月号
154.比々岐の森 平成5年6月号
155.堀抜氏頌功(しょうこう)碑 平成5年7月号
156.初瀬街道の難所 八町坂改修紀功碑 平成5年8月号
157.田舎暮しの拠点・守口憩の郷 平成5年9月号
158.朝日山 喜福寺 平成5年10月号
159.野田のお不動さん 平成5年11月号
160.郷士・福森氏宅址(たくし) 福森氏城跡 平成5年12月号