幻でなかった古塁砦の跡
幻でなかった古塁砦の跡
平成7年12月号
「三重の中世城館(昭和52・県教委編集)」という本の付図には、上野市立図書館蔵の「国境険図(藤堂藩の国境警備の古図)」の写しが載っていて、その中で阿保の「古塁」として、無名の城館跡が大きく描かれている。
また三国地志に「阿保村の六本松(ろっぽんまつ)という地の城ノ越(しろのこし)というところに、屋敷跡らしい升形の土地があり、これが阿保頓宮の跡ではないだろうか」という意味の記事がある。
これを頓宮跡と考えるのは飛躍し過ぎるが、現在、六本松(以下すべて通称)とは、町道阿保種生線の発電所が見える付近をいい、城ノ越とは、同町道の十丁場(じゅっちょうば)桐ヶ丘4丁目へ下る急坂付近)と六本松の中間を少し西へ入った付近をいうので、図の位置から、2つは同じ場所だと思われる。
図面上の地形や道路配置などから、この地は六本松付近だと思い、何度か探したが発見できず、幻の城かと思われたのに、平成4年の県の調査で、城ノ越に土塁状の地形が発見され、直後に「三重県の城(平成3・郷土出版社刊)」という本に「古塁砦(とりで)」として既に載っていることを知り、幻でないことが分かった。
現地は、入口に川上と老川に如来(にょらい)道を示す道標を兼ねた地蔵の石像が立ち、その南の延長50mの切通しの両側に土塁や浅い空堀(からぼり)の一部が残る台地があり、全体としては80×50m程度の相当大きな城館の跡だと思われる。古来の重要な施設であったらしいので、今後の研究を期待する。
平成7年目次
173.街道いま、むかし 国見~高尾への道 平成7年1月号
174.青山高原 田代(たしろ)の今昔 平成7年2月号
175.福川地区の産土(うぶすな)神 八柱(やはしら)神社 平成7年3月号
176.二代目の阿保駅 近鉄・青山町駅の今昔 平成7年4月号
177.広域農道「千方(ちかた)橋」の完成 平成7年5月号
178.青山高原三角点 平成7年6月号
179.六郎別当(ろくろうべっとう) 平成7年7月号
180.近鉄・青山町駅付近 遺跡の発掘調査 平成7年8月号
181.兼好法師の恋ざんげ 平成7年9月号
182.勝地林道の今昔 平成7年10月号
183.諸木の産土(うぶすな)神 鹿島様 平成7年11月号
184.幻でなかった古塁砦の跡 平成7年12月号