笛吹の伝説と千方(ちかた)の四鬼窟(よつおにいわや)
笛吹の伝説と千方(ちかた)の四鬼窟(よつおにいわや)
平成8年1月号
青山民謡で「おらが故郷さの四つ鬼窟」とうたわれる高尾の千方城は、三国嶽と笛吹山の中間の位置にあった。
千方は官軍に攻められ、城から落ちのびるとき、千方の笛吹き石といわれる大岩の上で笛を吹いたという。この故事から、笛吹山は古代の製鉄所ではなかったのか、と推論されるようになった。
笛の文化研究家、東京の美濃晋平氏が昨年来町され、千方城跡も調査されたが、同氏の著書によると、笛の原点は火吹き竹にあり、火吹き竹は金属精錬所のフイゴに通じることから、笛吹きとは鍛冶屋のことだと述べられている。
昔の製鉄法は、山中に大きな溶鉱炉をつくり、鉄鉱石や砂鉄と木炭を詰め込み火をつけ、フイゴを足で踏んで風を吹き付け、高温で鉄分を溶かして取り出していたという。

四鬼窟からひと山越えた名張市の滝之原は、古代から砂鉄の産地として知られたところ、その砂鉄はこの地で精錬された。製鉄に従事する人たちは、寒い冬でも、腰みのをつけただけの上半身はだか、赤々と燃えさかる炎に映えた屈強な男たちの裸身は、鬼の姿として浮かび上がったのに違いない。
鬼は恐ろしいものの象徴。秘密の鉱山に誰も近づけさせない威嚇でもあったと思われる。官軍との戦いは、その製鉄の山の争奪戦だったと言えるのではなかろうか。
大昔、大和葛城の高尾張村で金属の精錬を業とする集団がいたと言われ、青山町の高尾との関連が考えられる。
平成8年目次
185.笛吹の伝説と千方(ちかた)の四鬼窟(よつおにいわや) 平成8年1月号
186.山中半右ヱ門 本陣跡碑 平成8年2月号
187.最も代表的な古墳 羽根・狐塚古墳群 平成8年3月号
188.ロマンただよう桜峠の春 平成8年4月号
189.奥鹿野の菩提寺 保徳山久昌寺 平成8年5月号
190.霧生の鉱山跡 平成8年6月号
191.小さな磨崖仏(まがいぶつ)阿保の子安地蔵さん 平成8年7月号
192.老川の中世城館 若山氏城 平成8年8月号
193.権現谷の双つ渕(ふたつぶち) 平成8年9月号
194.腰山の峯道(みねみち) 平成8年10月号
195.朱の欄干と金色の擬宝珠 大村橋 平成8年11月号
196.矢生(やお)中学校の上高尾分校 平成8年12月号