絶版になった旧青山町の「あおやま風土記」を紹介します

笹谷峠に建つ三つの村境地蔵

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笹谷峠に建つ三つの村境地蔵

平成元年9月号

 青山町と隣接する名張市とは、現在の国道165号線をはじめ、種生や高尾からも数多くの道路で結ばれています。なかでも県道霧生・長瀬線は、青山町の南部山岳地帯を東西に結び名張市に通じる道路で、古代から開かれた道として知られていますが、急峻な山や谷を縫って作られた道で、現在でも自動車の通行には、熟練した慎重な運転が必要です。

画像の説明

 この道の峠附近には3つの石仏地蔵が残っています。高尾側には「目なし地蔵」といわれ、高さ1m余りの自然石に「卍」だけが刻まれてあり、信心すればすべての目の病に霊効があるといわれ、今もお詣りする人があるのかお米が供えられています。

 名張市と青山町の境の三叉路には、大きな松の木の下に高さ50cmの地蔵があり、蓮の台座の下に「界」という字が刻まれ、「右たろう、左たかを」と道しるべを兼ねており、横には「施主、栄蔵」の名も見られます。

 これは、「右は大戸屋を経て旧太郎生村へ、左は高尾村へ」と道案内をしてくれています。

 ここから50m余りのところに「ふきたけ地蔵」が見えます。地籍は名張市ですが、「幼児が竹のように育つ」という霊効があると伝えられています。

 古代から伝わるこの3つの地蔵さんは、峠に行き交う人々に安らぎと慰めを与えてくれたと思いますが、いまは夏草におおわれて忘れられています。




昭和64年/平成元年目次
101.金の鳥を納めた「唐櫃石(からひついし)」の謎 昭和64年1月号
102.文殊の不動さん 平成元年2月号
103.座禅石と種子曼荼羅 平成元年3月号
104.雨乞いや豊作祈念のかんこ踊りの歌本 平成元年4月号
105.原始農耕時代の遺物か?川上の道祖神 平成元年5月号
106.黒住教名賀教会所 平成元年6月号
107.伝説「おまん田」 平成元年7月号
108.蔵骨器が多数出土した安田中世墓 平成元年8月号
109.笹谷峠に建つ三つの村境地蔵 平成元年9月号
110.伊勢路の宿 平成元年10月号
111.むかしの如来道 平成元年11月号
112.信仰の拠点に立つ地蔵姿の庚申(こうしん)さん 平成元年12月号

目次平成2年

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