黒住教名賀教会所
黒住教名賀教会所
平成元年6月号
国道165号線の下川原バス停から左に折れて、町道を約500m行くと、清楚な“黒住教名賀教会所”がある。大正12年に、信者さんたちの永年の願いがかなって上野教会所(上野市徳居町)から独立して創建され現在に至っている。
黒住教は、教祖黒住宗忠が文化9年(1812年)の秋、1週間のうちに、はやり病で父母を失い、その深い悲しみと加えて自分の闘病の中で、文化11年冬至の朝、お日の出を拝んで日の神の御霊威を受け、天照大神を中心に立教した教派である。
この教えは、明治に入って関西に広く布教され当伊賀地方にも大きな勢いで広まった。いち早く上野に教会所ができて伊賀の信者さんたちは遠い山坂を越えてお祈りを捧げた。今と違って当時上野へのお参りは大変なことだったにちがいない。
明治30 年代に入り、殊の外信仰の厚かったこの下川原の古老が発起して近隣町村の信者さんに呼びかけて教会所独立運動を展開し、その悲願がやっと大正12年に実現したのである。創建後早いもので60余年の歴史を刻み、黒住教は今年立教175年を迎える。
教主様の「誠神に通づ」の額が懸かる御神殿は美しく磨かれて、善男善女のお祈りが今日も営々と続いている。かって、参宮街道の宿場町として栄えた上津の里に、天照大神を柱に広まった黒住教の教会所ができた歴史は偶然ではなさそうである。若葉の萌える裏山から今老鴬(ろうおう)の囀りがしきりである。
昭和64年/平成元年目次
101.金の鳥を納めた「唐櫃石(からひついし)」の謎 昭和64年1月号
102.文殊の不動さん 平成元年2月号
103.座禅石と種子曼荼羅 平成元年3月号
104.雨乞いや豊作祈念のかんこ踊りの歌本 平成元年4月号
105.原始農耕時代の遺物か?川上の道祖神 平成元年5月号
106.黒住教名賀教会所 平成元年6月号
107.伝説「おまん田」 平成元年7月号
108.蔵骨器が多数出土した安田中世墓 平成元年8月号
109.笹谷峠に建つ三つの村境地蔵 平成元年9月号
110.伊勢路の宿 平成元年10月号
111.むかしの如来道 平成元年11月号
112.信仰の拠点に立つ地蔵姿の庚申(こうしん)さん 平成元年12月号